香港の夜を彩るエルドラド(黄金郷) ハッピーバレー競馬場での夢体験

ハッピーバレー競馬場
ハッピーバレー競馬場

 少し前の話になるが、昨年12月上旬、記者は香港国際競走に出走する日本馬を取材するため、1週間ほど香港に出張していた。ヨーロッパの競馬場はいくつか回ったことがあるが、香港競馬は初めて。東アジアを代表するメトロポリスでの日々は、短いながらに強烈な印象を残してくれた。

 なかでも強く記憶に刻まれたのが、水曜日にナイター競馬を行っているハッピーバレー競馬場だ。香港島の中心地から車で南へ15分ほど、香港で最も平均所得が高いとされる湾仔区(わんしく)のビル群にその黄金郷はある。都会に溶け込んだスタンドは外部から見ると都市型の野球場のよう。プロ野球ファンの人には、横浜スタジアムや神宮球場の感じといえばイメージしやすいかもしれない。だが、その中身は日本の競馬場とは全く違う豪奢(しゃ)なものだった。

 まず、最初に驚かされるのがその明るさだ。日本にもナイター競馬場はいくつかあるが、そのどれとも比較にならないほど多くの照明が照らされまさに不夜城といったところ。残念ながら記者のカメラセンスのなさで写真では伝わらないかもしれないが、現地にいると10階立てスタンドの荘厳さも合わせて圧倒される。少なくとも、今の日本に例えられる場所は思い当たらない。イメージとしては、20世紀FOX制作の映画で冒頭に流れる映像の感じだ。

 そして、音もすごい。終始爆音で音楽が流れ続けていて、まるで音楽フェスの会場のよう。記者が訪れたのは世界のトップジョッキーが一同に会しポイントを競う開催だったのだが、途中で行われた出場者紹介ではクイーンの「Don’t Stop Me Now」に合わせて花火が大量に打ち上げられていた。スタンドに漂うその煙とまばゆい閃光、大音量の音楽に包まれているとトランス状態に陥りかけ、競馬にきているのかクラブナイトにきているのか分からなくなってくる。

 しかし、そんな異様な雰囲気の中でも香港の競走馬は落ち着いている。スタンドとコースの間に設置されたパドックは観客との距離も近く、日本の感覚では少し危険な感じもするほど。だが、一切イレ込むことなく出走馬たちは静かに周回していた。香港競馬に出走する馬はほとんどがセン馬だが、それにしたっておとなしい。どれだけ馴致(じゅんち)をすればあそこまで落ち着くのだろう。

 いずれにせよ、夢のような体験だった。競馬ファンのみならず足を運んでみる価値は間違いなくある。何を感じるかは人それぞれだろうが…。(中央競馬担当・角田 晨)

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