【天皇賞・春】福永祐一騎手、ワールドプレミア復活Vに導きJRA史上2組目の春秋盾親子制覇

頑張ったワールドプレミアの首筋をなでて奮闘をたたえる福永
頑張ったワールドプレミアの首筋をなでて奮闘をたたえる福永

◆第163回天皇賞・春・G1(5月2日、阪神・芝3200メートル、良)

 ユーイチが悲願の春の盾初V、完璧エスコートで菊花賞馬が復活だ。第163回天皇賞・春は2日、京都競馬場が改修中のため、阪神競馬場の芝3200メートルで無観客で行われ、ワールドプレミアが、直線で差し切ってレコードV。19年の菊花賞以来のG1制覇を成し遂げるとともに、福永祐一騎手(44)=栗東・フリー=は初めて天皇賞・春を制した。父・洋一氏(72)との春秋天皇賞の親子ジョッキー制覇は、JRA史上2組目の快挙だ。

 ジョッキー親子制覇だ。76年に父・洋一氏がエリモジョージでつかんだ春の盾を、福永が18度目の挑戦でついに手にした。「格式の高いレースを勝つことができ、光栄です。非常に強かったです。最後はみんな脚が上がるようなタフなレースになったけど、よく抜け出してくれました」。初コンビのワールドプレミアに、19年の菊花賞以来となる約1年半ぶり勝利を届けたヒーローは、マスク越しに充実感をにじませた。

 27年ぶりの阪神開催&変則コースにも対応する熟練のリードだった。2周目では内回りの短い直線を意識して3角過ぎから早めにスパートを開始。目標にしていたアリストテレスをかわすと、ゴール前は1番人気のディープボンドとの一騎打ち。メンバー最速の脚で外からねじ伏せ、最後は3/4馬身差をつけた。「もう少しいいスタートでいい位置から進めたかったのですが、内枠でリカバーすることができて長くいい脚を使ってくれました。立派なステイヤーです」。全兄のワールドエースでは12年の皐月賞で2着、日本ダービーで4着とG1には届かなかっただけに、喜びは格別だった。

 秋の天皇賞では、72年のヤマニンウエーブ、そして自身の13年ジャスタウェイで父との親子制覇をすでに成し遂げていた。これで春秋の天皇賞で親子制覇。横山富雄・典弘以来、JRA史上2度目の勲章だ。ただ、福永は「基本的に人間の記録は重要視していません」と、さらりと受け流す。あくまでも馬が主役。その信念が揺らぐことはない。

 「基本的に初めて乗る馬には、仕事として以前に乗った騎手に特徴を聞いています。もっとうるさいと聞いていたが、心身ともに馬が成長していました」。今回は、菊花賞でワールドプレミアとコンビを組んでいた武豊から情報を入手。逆に聞かれれば、すべてを答える。それが、馬にとって、必ずプラスになるからだ。

 コントレイルで3冠を達成した昨年の菊花賞以来のG1勝ち。ユーイチの8大競走完全制覇も残るは有馬記念のみとなった。「引き続きいいレースを提供できればと思います」と前を見据えた。この勝利で史上4人目の重賞150勝を達成した名手は、卓越した技術で競馬史に足跡を残し続ける。(内尾 篤嗣)

【ちょっといい話】父・洋一の名をさらに輝かせた

 高知競馬で2010年から行われている福永洋一記念が3日に行われる。その前日に福永祐一騎手が大レースで勝った。

 コロナ禍で今年も現地に足を運ぶことはできないが、このイベントへの思いは強い。「自分の力だけでできたことではない。高知県競馬組合の人たちをはじめ、いろいろな方の協力があったから、ここまできた」。父・洋一氏は高知出身。地元では坂本龍馬と並ぶ存在といっても過言ではない。昭和の名手だった父、そして父が育った高知への感謝の気持ちを忘れず騎手としての活躍を続け、福永洋一の名をこの日、さらに輝かせた。

 日本騎手クラブの副会長でもある。持続化給付金の不正受給問題に対しては様々な対応を迫られた。そんな状況でも騎手として結果を残したことの価値は小さくない。馬に乗る以外にも様々な重要な役割を担いながらも「やることは変わらない。いいレースができるように全力を尽くすこと」と力強い。これからも存在感を示し続けてほしい。(内尾)

 ◆ワールドプレミア 父ディープインパクト、母マンデラ(父アカテナンゴ)。栗東・友道康夫厩舎所属の牡5歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算成績11戦4勝。総収得賞金は4億5594万3000円。主な勝ち鞍は菊花賞・G1(19年)。馬主は大塚亮一氏。

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