◆オークス・G1(5月22日、東京・芝2400メートル、17頭立て=良)
桜花賞の勝利は決してフロックではなかった。勝負の直線。スターズオンアース(牝3歳、美浦・高柳瑞樹厩舎、父ドゥラメンテ)はルメールに導かれて内から外に出ると、ステッキが入ってからストライドを伸ばしてみるみるうちに加速し、一気に先頭に立った。1頭だけ上がり3ハロン33秒台(33秒7)をマーク。しっかり力を出し切って、桜花賞に次ぐ牝馬クラシック2冠目。やはり強さは本物だ。やっとこの段階で気付いた。
オークスの枠順が決まったのはレース3日前の5月19日。そこでスターズオンアースに割り当てられたのは18頭で最も外の18番枠だった。過去10年で3着以内すらなく、18頭立てになった92年以降でも10年のサンテミリオンがアパパネと同着Vの1回だけという圧倒的に不利な枠。それでも名手ルメールはうまく中団やや前につけて運び、うまく距離ロスもなく追走した。レース前には「与えられたところで頑張るしかない」と高柳瑞調教師は話していた。後日再度振り返ってもらった時には「レースを見ていれば有利な枠ではないなと。そこで頑張るしかないので、1コーナーの入りで、いい位置、中団をとれたのが大きかった」とのコメントがあった。
桜花賞は勝ったスターズオンアースから10着のナミュールまではわずかに0秒3差の史上まれに見る大混戦だった。それだけに関係者からは「走るたびに着順が変わるだろう。どの馬が勝ってもおかしくなかった」との声も挙がっていた。そんな3歳牝馬の大混戦説を一気に吹き飛ばす快勝。距離が2400メートルに延びたとはいえ、2着に0秒2(1馬身1/4)差をつける強い勝ち方。力の差がそうない戦いで、大外枠というハンデを考えれば本命にはできない―。そう思ったが、それを跳ね返してのV。こちらの想像を大きく上回るレースだった。
勝利をつかんだ後、鞍上のルメール騎手は「彼女のポテンシャルは高い。アーモンドアイと同じぐらい」と、「怪物」の異名を取ったG1・9勝のアーモンドアイの名前を出した。牝馬クラシック2連勝はただの「強い」ではなく「とてつもなく強い」を感じさせた。(恩田 諭)