◆第57回共同通信杯・G3(2月12日、東京競馬場・芝1800メートル)
第57回共同通信杯(12日、東京)で重賞初制覇に挑むファントムシーフ(牡3歳)は、近年の日本競馬の隆盛を築いたサンデーサイレンスの血を全く持たない異色の一頭だ。生産者の思いを「母を訪ねて」でたどる。
2勝馬として参戦する2頭の一角、ファントムシーフは昨今では珍しく、父方にも母方にもサンデーサイレンスの血が入っていない。生産した谷川牧場の谷川貴英社長(58)が17年12月、英ニューマーケットのタタソールズ繁殖牝馬セールで母ルパン2を購入。「2」が多く並ぶ20年2月22日に、2番子として生まれたのがファントムシーフだ。
初年度産駒の半姉は4勝を挙げ、現オープンのルピナスリード。貴英氏は「初年度はどうしても小さめに産まれるので」と、520~540キロ台で活躍したダイワメジャーをつけた。2年目にハービンジャーを種付けしたのは購入時から決めていたこと。「名馬を生産する方法として、同じ母系同士のクロスがはやっていて。ケラリという繁殖馬の4×4のクロスを試したかったんです」。種牡馬として大成功を収めるデインヒル、ノーザンテーストなどの例があることから、信念を貫いたという。
ルパン2とは運命的な出会いだった。前記のセールでは、事前に取り寄せた名簿でチェックしていた馬が高額だったり、思うような馬っぷりでなかったりしたため買えずにいた。ルパン2はノーマークだったが、同行した他の牧場関係者がチェックしていた。「彼が違う馬を先に買って、『ルパン2は競りますか?』と筋を通したら『もう買ったからいいですよ』と。その方と行ってなかったら、巡り合ってなかったかも。縁を感じます」。最近10年の勝ち馬から6頭のG1馬、3頭の皐月賞馬を出している出世レース。異色の血統がその名の通り、初タイトルを「怪盗」するかもしれない。(玉木 宏征)