デビュー3年目の古川奈穂騎手=栗東・矢作芳人厩舎=が先週で約2か月にわたる小倉滞在を終えた。「本当に色んな方のおかげで、小倉滞在が最後までできたと思います」。前向きに語る様子から、充実ぶりがひしひしと伝わってきた。
滞在を決めたきっかけは師匠・矢作調教師の勧めだった。「栗東から滞在する考えはなかったんですけど、先生からそういう選択肢があると言っていただいて、色々と環境を変えてみるのもいいかな」と決断。栗東所属の騎手が冬の小倉に滞在することは少ないが、自身の成長のために、一歩踏み出した。
自厩舎の馬やスタッフもおらず、普段接するジョッキーも少ない状況に不安はなかったのか。実際、「調教に乗せていただける厩舎があるのか」と心配だったというが、昨夏の北海道滞在で作った他厩舎との縁が生きた。さらに、調教終わりには自ら厩舎回り。「名乗ってあいさつをして、それが調教につながって、さらに競馬につながって」。積極的な“営業”の成果は数字にも表れている。関東馬の騎乗はデビュー年の21年が26鞍、22年が24鞍だったのに対し、今年はすでに14鞍(26日現在)だ。
人間関係の広がりは厩舎関係者に限らない。「普段あまりお話ししたことがないジョッキーの方も滞在されていたので、他のジョッキーとの関わりという面でも新しいつながりができたと思います」。女性騎手の先輩である藤田菜七子騎手や、美浦所属の障害ジョッキーなどと会話する機会も増えたという。
今までと異なる環境での生活。リフレッシュ方法を尋ねると、意外な答えが返ってきた。「結構、馬場は走ってましたね」。雨の日以外はほぼ毎日、芝コースの外側を1~2周ランニング。当初は一人だったが、そのうち美浦の女性厩務員とも一緒に走るようになった。「実際に競馬で乗るところでもあるので、結構馬場の様子を見たりとか、一石二鳥です(笑い)」。オフも“競馬第一”を貫く姿勢には、尊敬させられるばかりだ。
今年は現在4勝。2年目までは主に逃げ切りや途中で先手を取る競馬で勝ち星を挙げてきた。しかし今年は全て中団から脚を伸ばす戦法で勝っている。「選択肢として、逃げも常に考えてはいます」としつつも、「自分の中でも、ワンパターンではなく勝てるようになってきたのはいいことだと思いますね。競馬のバリエーションが増えると思います」という。自身が実感する通り、着実に進歩している印象だ。
26日の開催を最後に引き揚げ、今週から栗東に戻る。向上心を持ち続け、小倉滞在という新たなチャレンジをした22歳。その成果を、これからも楽しみにしている。(中央競馬担当・水納 愛美)