【オークス】中内田充正調教師、厩舎史上最強のリバティアイランドで牝馬2冠へ「いろんな人が関わっているので、その人たちの思いをしっかりと背負って勝負に挑みたい」

2冠に向け、抜かりのない調整を続けるリバティアイランドと中内田調教師
2冠に向け、抜かりのない調整を続けるリバティアイランドと中内田調教師

◆第84回オークス・G1(5月21日、東京競馬場・芝2400メートル)

 第84回オークス(21日、東京)の主役リバティアイランドを管理する中内田充正調教師(44)=栗東=は、自身も2年ぶりのリーディングへ首位を快走中だ。史上17頭目の牝馬2冠へ向けたインタビューでは、自身のホースマン人生で最高とも言える愛馬の素質を証言した。

 中内田調教師がリバティアイランドを初めて牧場で見たのは、1歳の夏前だった。その段階ですでに、他の馬とは違う素質を感じたという。

 「素材はいいものを持っているなと思いました。恵まれた体、あとは身のこなし。特にトモ(後肢)の強さが特徴でした」

 16歳の時に欧州で研修を始め、世界各地で調教に携わったトレーナー。数多くの名馬の背中を経験したが、リバティアイランドは“厩舎史上最強”と言っていい存在だ。

 「たぶん(これほどの馬は)初めてじゃないですか。助手という立場で乗っていいなあと思うのと、管理させてもらっているのでは、全く別物という感じです」

 楽に抜け出した阪神JFに続き、桜花賞も絶望的な4角16番手から差し切った。レース中は決して心中穏やかだったわけではないが、そのぶん余計に、強さを実感する結果になった。

 「見ている方はドキドキハラハラというレースでしたね。馬が競馬を覚え、前半は力まず走ることをしてくれて、最後はジョッキーに動かされたら動いて、強い内容だったと思います」

 牝馬2冠に向けたポイントは2400メートルという距離に尽きる。巡り合わせもあるが、自身のこれまでのJRA重賞33勝は全て2000メートル以下。厩舎としては是が非でも結果を出したいところだ。

 「持ちそうというよりは、こなしてくれるんじゃないかな、というところ。調教の通りにリズム良くいければ。ずっと1600メートルを使ってきた馬ですし、極端に距離が延びるわけですから、大きな課題だと思っています」

 11日の1週前追い切りは「力まず、リズムよく走る」という課題をテーマに単走で臨ませた。栗東・CWコースで5ハロン71秒9―11秒9。軽めに映ったが、折り合いはスムーズだった。

 「距離を意識したのと、現状の馬の体も考慮して。非常にリラックスして、しまいも伸び伸びと走れていました。イメージ通りに走ってくれた感じですね。1回使って体もぐんと締まりましたし、いつでも動けそうな体をしています。東京までの輸送もありますので」

 同世代の牝馬では頭一つも二つも抜けた存在だが、楽観はしていない。

 「G1ですから、出走している限りどの馬にもチャンスはありますし、日本の競馬は特に展開一つでガラッと変わるような内容が多い。決して抜けているとは思ってはいません。この距離になっていい走りをする馬もいるでしょうし」

 鞍上は少年時代から弟分として交流がある川田。今年の調教師、騎手リーディングでそれぞれが勝利数、勝率、連対率、3着内率の全部門トップを走る最強のタッグで、目指すは頂点のみだ。

 「川田騎手はデビュー前からまたがってくれていますし、お互いに分かり合える騎手。1頭出走させるためにいろんな人が関わっているので、その人たちの思いをしっかりと背負って勝負に挑みたいです。前走はいい内容で勝ち切ってくれました。馬の状態もいいですし、いい結果を求めて調整していきたいですね」(聞き手・山下 優)

 〈取材後記〉 調教師は各地を飛び回り、多忙を極める職業だ。昨年まで4度の最高勝率調教師のタイトルに輝いた中内田師は、自ら積極的に調教に騎乗する。決して妥協せず、365日、馬のことを考える“厳しい人”のイメージだった。

 ところが今回、「家に戻ったら僕はオフです。家族の時間ですし、そこがリラックス」と笑顔で話す姿を見て、仕事のできる人はオンとオフの切り替えもうまいと実感した。2月で引退した橋田満元調教師が「(中内田師は)もっとすごい調教師になる」と話していたことを思い出しながら、私はペンを走らせていた。(優)

 ◆中内田 充正(なかうちだ・みつまさ)1978年12月18日、滋賀県生まれ。44歳。栗東トレセン所属。競走馬の育成牧場を営む家に生まれ、16歳からアイルランドで研修。欧州各国、米国でも数々の名馬の調教に携わる。橋田満厩舎の調教助手を経て12年に調教師免許を取得し、14年3月に開業した。JRA通算2094戦361勝(うち重賞はG1・6勝を含む33勝)。家族は妻と1女。

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