◆第28回秋華賞・G1(10月15日、京都・芝2000メートル)
第28回秋華賞・G1(15日、京都)は、春のクラシック2戦を驚異的な強さで圧勝したリバティアイランドの3冠が最大の焦点だ。1週前追い切りで自己ベストを更新するなど、トレセン帰厩後の調整は順調そのもの。中央競馬担当3年目に突入した水納愛美記者は、初のG1観戦となった2年前の記憶をたどり、史上7頭目の偉業達成に絶大な信頼を寄せた。
「あっ、ソダシが…」。阪神競馬場のスタンド最上階で、力なくつぶやいたことを覚えている。21年の秋華賞。ターフに映える純白の馬体は、直線半ばで馬群にのみ込まれていった。単勝1・9倍のアイドルホースがまさかの失速。記念に買った単勝馬券を握りながら、ぼう然とした。
当時の私は、中央競馬担当に配属されてまだ1か月。この秋華賞が、初めて生で見るG1だった。コロナ禍で入場者数は制限されていたが、観客の熱量は明らかにいつもより高い。おなじみのファンファーレが鳴ると、独特の緊張感に包まれた。「これがG1か…」。大一番の盛り上がりを、はっきりと体で感じた。
牝馬3冠最終戦を制したのは、ソダシと同じ勝負服のアカイトリノムスメだった。3冠牝馬アパパネとの母子制覇。桜花賞4着、オークス2着と辛酸をなめた良血馬の、待望の栄冠だった。国枝調教師、戸崎騎手をはじめとする関係者の笑顔。大声の代わりに、温かい拍手で祝福を伝える観客。その様子を見ているうちに、外した馬券のことなど忘れていた。「競馬っていいなあ」。一昨年の秋華賞は、そう教えてくれた一戦でもあった。
あれから2年。ソダシはターフを去り、お世辞にも競馬記者とは名乗れなかった私は責任を持って予想する立場になった。今年はリバティアイランドがソダシをはるかにしのぐ圧倒的な1番人気を集めるに違いないが、逆らうつもりはない。絶望的な位置から差し切った桜花賞。他馬と別格の脚を見せつけたオークス。この2戦で、すでに無敵は証明済みだ。そして1週前追い切りで、3冠達成の確信はより高まった。川田騎手が手綱を動かすたびに着実にギアを上げ、猛烈な勢いでゴール。「いいものを見た」と、自慢したくなる動きだった。
2冠馬が秋華賞で敗れた前例はあるが、今のところは何も不安がない。3冠達成はもちろん、どれだけ圧倒的なパフォーマンスを見せてくれるかを、今から楽しみにしている。(水納 愛美)