◆ジャパンカップ追い切り(22日、栗東トレセン)
考えに考え抜いたと思う。パンサラッサはドバイ遠征後に右前脚の繋靱(けいじん)帯炎を発症した。当初は復帰戦の候補にチャンピオンズCが挙がり、その後に前週のジャパンCにも登録。チャンピオンズCは一度の出走で大敗した日本のダートで、ジャパンCは適距離より長い。「自分の競馬をしやすいんじゃないか、と。苦渋の決断でしたが、そのなかでベストだと決断しました」と矢作調教師はJC参戦の経緯を明かす。
前倒しに踏み切ったのは、状態面への手応えが深まっているからこそだ。15日に栗東・CWコースでの3頭併せで負荷をかけ、その4日後の19日にも6ハロン78秒9―11秒7と破格の時計。「あの動きが大きかった」と振り返るように、その日のうちに参戦を表明した。
最終追いは坂路で軽めだったが、54秒3―11秒8とさすがの伸びだった。「ラストも切れがあって、良かったと思う」。ただ、8か月ぶりの実戦で中間の速い時計は坂路で2本、CWコースでも2本。「あの日曜日の調教がもう一本できれば万全だけど」と苦笑いでこぼした。
この日の取材で何度も口にしたのが「この馬の出走で盛り上げたい」という言葉。その光景で思い出したのがアーモンドアイ、デアリングタクトとの3冠馬対決となった20年のJCだ。菊花賞後の疲労はあったが、「ファンの、競馬としての盛り上がりを考えて」と参戦を決意した。あれから3年。そのコントレイルと同世代で、大逃げを武器とする快速馬で再び参戦する。「思い切って行かせます。それでバテたら仕方ない」と力強い逃げ宣言。日本競馬を引っ張る勝負師の決断が気になってきた。(山本 武志)