![17年にキタサンブラックで連覇を成し遂げた武豊は左手で「V2」を示した](https://hochi.news/images/2020/04/30/20200430-OHT1I50187-L.jpg)
驚異の時計に衝撃が走った。キタサンブラックが連覇を決めるゴールへ飛び込んだ時、掲示板に刻まれた時計は赤い「R」が点灯した3分12秒5。あのディープインパクトが06年に樹立したレコードを0秒9も上回っていた。そのディープの背中も知る武豊が「レコードで走ったのは驚きでしたね」と振り返れば、「すごい時計。これを破るような馬はこれからもいないと思います」と清水久調教師は最大限の言葉で愛馬をたたえた。
前半1000メートルが58秒3の速い流れ。しかし、武豊は道中もラップを緩めず、人馬一体の逃げで隊列を引っ張った。「2年目はさらに期待していました。(馬が)強くなっていて状態は最高でした」。天皇賞・春8勝とレースを知り尽くす名手の手綱さばきを、清水久調教師は懐かしそうに絶賛する。「完璧なペース配分ですよね。(他馬に)やられるとは思いませんでした」。カレンミロティックとの接戦を4センチ差で制した1年前は「負けた」と思っていたが、2度目は余裕があった。
キタサンブラックは同年暮れ、JRA・G1史上最多タイの7勝や歴代最多の獲得賞金など数々の記録を残して、ターフを去った。「やはり、2度目はぶざまな競馬をできないという気持ちが強かった。あの頃の『競馬に負けたくない』という気持ちは後にも先にも初めてだったかもしれません」とトレーナー。様々なプレッシャーに打ち勝った歴史的な逃亡劇は、今後も長く語り継がれていくことだろう。(山本 武志)