G1香港カップが12月11日に迫った。過去5年の調教国別成績は日本が3勝、2着3回、3着1回。2年連続でワンツーフィニッシュを決めており優勢だ。次いで香港が2勝、2着1回、3着3回。今年も日本と香港の争いだろう。
最大の焦点は逃げ宣言のパンサラッサ(牡5歳、栗東・矢作芳人厩舎)。同着優勝のG1ドバイターフ(芝1800メートル)は前後半のラップタイムをイーブンに保つ鮮やかな逃げ切り勝ち。2着だった前走の天皇賞・秋でのケレン味のない逃走劇は地力を示すと同時に、感動的ですらあった。
香港カップは例年スローペースになりがち。シャティンの芝2000メートルにおいて前半800メートルが49秒を切れば、かなり速い部類となる。パンサラッサがここで瞬発力比べに持ち込むとは思えず、出方次第では48秒以下の超ハイペースか。これはもう未知の領域だが、前半のリードが十分ならば小回りのコース形態も利した逃げ切りは無理筋ではない。
ジャックドール(牡4歳、栗東・藤岡健一厩舎)は札幌記念でパンサラッサを破った。同レース勝ち馬は2020年1着ノームコアをはじめ香港カップでの好走例が多い。昨年の大阪杯を逃げ切ったレイパパレ(牝5歳、栗東・高野友和厩舎)も強力な先行馬で、失速したパンサラッサを交わして押し切るシーンは容易に想像できる。
ダノンザキッド(牡4歳、栗東・安田隆行厩舎)は前走のマイルチャンピオンシップ2着と鋭い決め手が光った。2歳時ながらホープフルSではタフな流れを好位から早めに抜け出し、あのタイトルホルダー(4着)を撃破。今度の速い流れがプラスに作用する可能性はあるだろう。それは皐月賞馬ジオグリフ(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)にも通じるところで、今春の差し脚が戻れば復活勝利があっていい。
超強力な日本勢に対して、太刀打ちできるとしたら地元香港のロマンチックウォリアー(セン4歳、香・シャム厩舎)だけだろう。同馬については前哨戦分析をご覧いただきたいが、付け加えるとしたら、香港カップのひとつ前に行われるG1香港マイルの結果。しのぎを削ったカリフォルニアスパングルがゴールデンシックスティを破るようなら、ロマンチックウォリアーの評価を上方修正する必要がある。
◆成田幸穂(なりた・さちほ) 1984年8月8日、東京生まれ。(株)サラブレッド血統センター所属。週刊競馬ブック連載「海外競馬ニュース」の編集を担当。同誌のほか、研究ニュースで予想コラム「血統アカデミー」を執筆中。12月11日(日)ラジオNIKKEI第1「香港国際競走実況中継」に出演予定。