【オークス】吉田隼人ソダシと恩返しV 騎手を目指すターニングポイント中2で見た1997年兄の樫制覇

ソダシと無敗のまま樫の舞台に挑む吉田隼人(左から2人目)と須貝調教師(カメラ・高橋 由二)
ソダシと無敗のまま樫の舞台に挑む吉田隼人(左から2人目)と須貝調教師(カメラ・高橋 由二)
桜花賞&オークス優勝馬表
桜花賞&オークス優勝馬表

 第82回オークスは23日、東京競馬場の芝2400メートルで行われる。白毛のアイドルホース、ソダシには、昨年のデアリングタクトに続く史上3頭目の無敗での牝馬クラシック2冠制覇が懸かる。その手綱を執ってきたのが吉田隼人騎手(37)=美浦・フリー=。騎手を目指した原点は、兄の吉田豊騎手(46)=同=がメジロドーベルと制した1997年のオークスだ。思い出の樫の舞台で偉業に挑む。

 史上3頭目の無敗での牝馬クラシック2冠に挑むソダシ。デビュー5連勝で桜花賞馬に輝いたが、白毛馬として史上初のクラシック出走でもあった。最終的に僅差で2番人気に甘んじたが、2歳女王としてマークされる立場だったのは間違いない。主戦の吉田隼が導いてきた連勝街道だ。

 「毎回毎回、能力を出し切ってるんで。結果も伴っているし、いいことだなと思います。勝っても勝ってもライバル馬(阪神JF、桜花賞ともに2着のサトノレイナス=日本ダービー出走予定)の方が強いねっていう印象が残っちゃう。力差は分からないけど、結果として勝てているのは良かったです。完成度と、立ち回り(のうまさ)でうまいこといってますね」

 桜花賞は、早めに滋賀・栗東トレーニングセンターに帰厩したとはいえ、放牧明けでリフレッシュしていた。今回は在厩しての調整がポイントになる。

 「(前走は)こんなに落ち着いたんだ!と思いました。今回は在厩で少しピリピリしてますね。カラスの動きで跳びはねたり、音に敏感になっています。当日、課題のゲート内でどうなるかという面はありますね」

 初の2400メートルに関して、デビューから手綱を執り続ける主戦はどうとらえているのか。

 「体力があるし、距離自体は気になりません。跳びが大きいという意味でも。(力の要る北海道の)洋芝でしんどい競馬で勝ってますしね。それよりスタートしてジワッと行けるか。コントロールがすごく大事」

 大人気ゲーム「ウマ娘」にも登場するG1・5勝馬メジロドーベル。兄・吉田豊が全レースでコンビを組んだ。97年のオークス優勝時、隼人少年は中学2年生。家族で東京競馬場で応援した。

 「大歓声の中で『ヨシダ』コールを聞いて、しびれましたね。鳥肌が立ったし、レースが始まる前は僕も緊張しました。その緊張感ってジョッキーならではだと思うんで。僕がジョッキーを本気で目指すターニングポイントになりました」

 小学5年生から乗馬を始めたが、身長130センチぐらいで体も小さく、馬を御せずに落とされた。怖い感覚しかなかったが、初めて目の前で兄がG1を勝ち、衝撃を受けた。あれから24年、くしくも兄もミヤビハイディで参戦予定だ。目の前で勝って、最大の恩返しをしてみせる。

■吉田豊のミヤビハイディと兄弟対決

 吉田隼の8歳上の兄・吉田豊は1997年に2歳女王のメジロドーベルでオークスを制した。2着に敗れた桜花賞からの臨戦で「絶対に勝たなければ、というプレッシャーはありましたが、距離が延びていい馬だったので期待も大きかったです。ソダシは距離延長がどうなのかは分かりませんが、この時期の3歳牝馬はほとんどの馬が2400メートルは初めてですからね」と手綱さばきに注目。自身もミヤビハイディで挑むが、「ああいう馬に出合えて、続けて乗せてもらえるのは、なかなかないこと。悔いが残らないよう乗ってほしいと思いますね」と穏やかな口調でエールを送った。

 ◆騎手のオークス兄弟制覇 武豊が93年ベガ、95年ダンスパートナー、96年エアグルーヴで3勝を挙げ、弟の幸四郎(現調教師)が13年にメイショウマンボでV。97年メジロドーベル、02年スマイルトゥモローで2勝の吉田豊の弟・隼人がソダシで勝てば2例目となる。

 ◆吉田 隼人(よしだ・はやと)1983年12月20日、茨城県出身。37歳。2004年3月にデビューし、JRA通算1002勝。15年有馬記念(ゴールドアクター)などG13勝を含むJRA重賞21勝。美浦所属だが、18年10月から栗東に腰を据え、調教に精を出す。昨年はデビュー17年目でキャリアハイの91勝を挙げた。160・0センチ、48・0キロ。血液型O。

 ◆取材後記 ソダシで阪神JFを勝った後、じっくり話す機会があった。「春はサトノレイナスが怖い」と早くも警戒していたのが強く印象に残っている。桜花賞の前に話した際も、同馬の1週前追い切りからチェックして「反応が早くなってた。ソダシはゲート先入れだし、どうなるか」と指摘し、素直に◎サトノレイナス、○ソダシにしてしまった(苦笑い)。

 今回、本人に自己分析をしてもらった。「話してみないと分からないと思うんですけど、熱い男だと思います(笑い)」。熱く、熱く語ってくれたが、「勝てる」などのワードは出てこなかった。「(最終追い切りを迎えるにあたって)どんなテンションになっているか」。どこまでも慎重だった。現時点で私は○評価だが、また裏切られそうな気がしている。(玉木 宏征)

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