和田竜二騎手らサポートするバレットの岩田咲子さんの心構え 「勝っても『おめでとうございます』は言いません」

和田竜二騎手(右)とバレットの岩田咲子さん(本人提供)
和田竜二騎手(右)とバレットの岩田咲子さん(本人提供)

 競馬開催日にビブスを着て、騎手のサポートをするバレット。岩田咲子さんは、和田竜二騎手の他に、3年前から浜中俊騎手、藤岡康太騎手も担当している。レース前の検量がスムーズに行くように、鞍の準備をしたり、検量室前に引き揚げてきた騎手からステッキを受け取ったりする。レースごとに負担重量が違うため、「今朝は何キロで来るかな?」とジョッキーの体重を予想して鉛で調整し、鞍を準備していくが、昼ご飯を食べる食べない、何を食べるかまで聞きながらの綿密な作業だ。「ジョッキーが気持ち良く、スムーズに乗るために。プラスはおこがましいですが、マイナスにならないように心がけています。例えば1Rで勝った鞍を、メインで使ってゲンをかつぐこともあります。和田さんは知らないでしょうね(笑い)」と心構えを教えてくれた。

 ジョッキーがレース中に履く白いズボン、通称「ジョッキーパンツ」を洗うのも仕事のひとつ。雨の日は芝の塊や砂が飛んできて、野球でスライディングした時のような汚れが残るため、強力な洗濯せっけんで予洗いしてから洗濯し乾燥。乾燥したものをすぐに履くこともある。「数年前、和田さんがいきなり、アイロンを買ってきたんですよ。ジョッキーパンツにアイロンがけする騎手は数人なので、仕事が増えて大変ですが(笑い)、気持ち良く乗ってもらいたいので」。

 普段は感情を表に出さないようにしている。「勝っても『おめでとうございます』は言いません。勝てばうれしいですが、悔しいことも多いので精神を一定に、淡々とこなすようにしています」。今年で17年目になる岩田さんだが、一番感動したのは、和田竜騎手が18年の宝塚記念をミッキーロケットで制した時だ。その前にG1を勝った(テイエムオペラオーで勝った01年の天皇賞・春)時はバレットの仕事に就いておらず、約17年ぶりのG1制覇に「感動しました。泣きましたけど、和田さんが(検量室前に)引き揚げてくる時には、何事もなかったかのように振る舞っていました」とポリシーを貫いた。和田竜騎手も「長くやってくれて、安心感があります。完璧は求めません。競馬に集中できて、感謝しかないです」と強固な信頼関係で結ばれている。

 最後に、岩田さんにとって和田竜騎手はどんな存在か尋ねた。「身内ではないですが、兄のような存在なので、この先も怪我なく、更に感動の更新ができるようにサポートしていきたいですね」。和田竜騎手がまたG1を勝つ日も近いはずだ。

(中央競馬担当・玉木 宏征)

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