堀内調教師2年目の戦いへ 掲げるテーマは「乗りやすい馬づくり」

堀内岳志調教師
堀内岳志調教師

 注目している人がいる。来月で開業2年目を迎える堀内岳志調教師=美浦=だ。

 同師は二ノ宮敬宇厩舎を経て小桧山悟厩舎に所属し、昨年3月に厩舎を開業した。二ノ宮厩舎時代には凱旋門賞2着のナカヤマフェスタを担当。腕利きとして知られた。開業当時には「二ノ宮先生には馬づくりのイロハを学んだ。小桧山先生にはチームワークの大切さを学んだ」と話し、いずれは自厩舎から凱旋門賞Vをーとの思いを胸に厩舎をスタートさせた。

 堀内師とは、小桧山厩舎の在籍時に取材を通じて知り合った。記者と同じ1973年生まれ。アイネスフウジンが勝った1990年の日本ダービーで沸き起こった伝説の「ナカノコール」に心を奪われ、競馬にどっぷりはまった点が共通する。当然、思い出も重なることが多く、取材もオグリキャップ、トウカイテイオーと、いつの間にか昔話に脱線する。普段は物腰が柔らかく、どちらかというと「静」の人だが、競馬の話題になると「動」に一変する。

 さらに厩舎運営の話になるともう別人で、一気に熱を帯びていく。厩舎のテーマは「乗りやすい馬をつくる」。操縦性の高さは競馬に直結するが、「馬と出合った時からそれは始まっている。人と一緒にいる時は人の言うことを聞くように。初めての競馬場に行っても、レースでもどんな時でも、人がいれば大丈夫と思わせることが大事。普段の引き運動や乗り運動から、共通認識としてそういうことを意識してやっています」と説明する。馬、人とのコミュニケーションを根幹に置いている。

 調教が終わった厩舎に堀内師を訪ねると、助手、厩務員がいる大仲と呼ばれる休憩所にいることが多い。競馬に乗る騎手、スタッフとの壁をなるべく低くし、本音で意見を言い合える風通しのいい関係をつくるためだ。「おべんちゃらではなく、本音で馬の話ができるように。調教師とスタッフの物差しのスケールを同じにしたいと思っています。その馬の最大瞬間風速を出せるように。本音で話さないと一歩も二歩も遅れてしまうから」

 厩舎をサッカーの戦術に例えることもある。「ラグビーやサッカーのW杯で、後ろにノールックパスを出すシーンを何度も見る。そこに人がいることが分かっているんですよね。馬に置き換えてみても、この人がこう動くと思うからこう動こうとか。自主的にそこまで考えられる厩舎になれればと思っています」。答えが一つではない世界だが、厩舎の指針を明確にすることで、最善に近づこうとしている。

 今週はクイーンC(11日、東京)にミカッテヨンデイイ(牝3歳、父イスラボニータ)を出走させる。近2戦で入れ込みが激しく結果が出なかったことから、今回は馬具を工夫し、競馬場入りも当日ではなく木曜入に前倒しすることを検討するなど、騎手、スタッフとともに試行錯誤を重ねている。昨年は2勝。今年は2けたを目標に掲げる。「当たり前のことを丁寧にやっていきたい」。最初は小さな種でも、そこから根を伸ばし、いつか大輪の花を咲かせる。どんな花が咲くのか、期待せずにはいられない。(中央競馬担当・松末守司)

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