
報知杯弥生賞ディープインパクト記念は62回目を迎える。東西の本紙予想担当が思い出の報知杯を振り返った。
2010年代の前半は毎年4月頃、北海道に出張してデビュー前の2歳馬を取材していた。13年にノーザンファームで初めて見たトゥザワールドは、母がエリザベス女王杯を勝ち、ドバイ・ワールドCでも2着と活躍したトゥザヴィクトリーで、全兄のトゥザグローリーは重賞5勝。血統的には間違いなく目玉の一頭だったが、当時の牧場関係者の評価は「兄より動きは俊敏。ただ、少し硬めだからダートでいいかも」と絶賛されていたわけではなかった。
そういう経緯もあって注目していた新馬戦(阪神)は1番人気で6馬身差の2着。「やっぱりか」。この時点では出世するイメージは湧かなかったが、2戦目の未勝利を勝ち上がると、続く黄菊賞(現1勝クラス)はコースレコード。さらに若駒Sでは、馬体重14キロ増の余裕残しで直線では一度もムチを入れず快勝。一気の3連勝で迎えたのが14年報知杯弥生賞だった。
栗東・池江厩舎所属だったため、牧場以来の“再会”だった良血は、明らかに馬体が成長していた。レースは直線でいったん完全に抜け出しながら、のちの日本ダービー馬ワンアンドオンリーが猛追。約4センチ差というヒヤヒヤの勝利は良くも悪くも強烈に印象に残り、この年はその後、すべて◎を打つことになる。3冠は〈2〉〈5〉〈16〉着も、9番人気だった有馬記念で2着に激走し、それまでの負債をすべて回収。今でも忘れられない一頭だ。
(東京本紙予想担当・西山 智昭)

記者が専門紙時代に美浦で働き出して2年目の2008年。05~07年の弥生賞は武豊騎手が3連覇していた。今よりも関西馬がG1レースで活躍していたこともあり、美浦トレセンでは何とか一矢報いたい、そんなムードが感じられたことを覚えている。
松岡正海騎手が乗る関東馬マイネルチャールズは2番人気での出走となった。個人的にブライアンズタイム産駒が好きだったこともあり、この年のクラシックは期待をかけていた一頭。当時まだオープン特別だったホープフルS、京成杯と連勝し、駒を進めてきた。1番人気は史上初の4連覇を狙う武豊が手綱を執る関西馬ブラックシェル。前走のきさらぎ賞では7着だったが、急坂のある中山替わりで、その末脚は注目を集めていた。
良馬場で行われたレースは、マイネルチャールズが逃げ馬の直後の2番手で運ぶ。ブラックシェルは中団で脚をためて直線へ。後続を振り切って先頭に立つマイネルチャールズに、追い込んでくるブラックシェル。だが最後まで脚いろは衰えずマイネルチャールズが3/4馬身差でしのぎ、勝利した。ゴール後、松岡は左手でガッツポーズ。美浦で取材する者にとってもうれしいレースだった。
これが最後の勝利となってしまったが、皐月賞3着、日本ダービー4着、菊花賞5着と牡馬クラシックで健闘。現役引退後も中山競馬場で誘導馬を務めていた。その姿を見るたび当時の記憶が思い出された。東西から多くの素質馬が集まる今年の報知杯弥生賞も、間違いなくクラシックに直結するはずだ。(大阪本紙予想担当・山下 優)