【思い出の弥生賞】「最強のトライアル」武豊のスペシャルウィークが格好良すぎた

のちに日本ダービー馬となるスペシャルウィークが武豊を背に駆け抜けた98年の報知杯弥生賞
のちに日本ダービー馬となるスペシャルウィークが武豊を背に駆け抜けた98年の報知杯弥生賞

 報知杯弥生賞ディープインパクト記念は62回目を迎える。競馬記者歴35年の吉田哲也記者が3冠路線につながる“最強のトライアル”を「見てきた」でひもとく。

 30年以上前の昔話になるが、先輩の言葉が頭から離れない。「本当に強い(現在の3歳)牡馬は、弥生賞、皐月賞、ダービー。春は、この3レースしか使わない」

 シンボリルドルフとディープインパクト。無敗の3冠馬2頭をクラシックロードへ送り出した「最強のトライアル」。昭和の後半から平成の半ばまで、それが報知杯弥生賞の位置付けだった。歴代の勝ち馬の名をながめている瞬間は、その時代に戻ることができる。3月を迎えると、心が躍った。

 武豊騎手が最多の8勝という驚がくの記録を残しているのも、その位置付けを端的に表している。日本競馬のトップに君臨し続けているスーパージョッキーに、その年のクラシックに一番近い馬の手綱が巡ってくる。ごく自然な流れである。

 あえてディープインパクトを脇に置いても、いくらでも名馬の走りを思い出すことができる。ダンスインザダークとスペシャルウィーク。武豊騎手の勝利のなかでも特別な存在と言っていい。ただ勝った、強かった、それだけではない。時計や着差を超越した勝ちっぷりは、目の前に広がる明るいクラシックロードを予感させた。

 ファンの数だけ思い出があることだろう。サンデーサイレンス産駒初のG1ウィナーであるフジキセキ、極悪馬場のなかを静かにぶっち切ったアグネスタキオン…。それでも、あえて一頭…と問われると、スペシャルウィーク。ゴール前、抜け出して来る姿の、なんと格好良かったことか。その存在にしびれた。

(吉田 哲也)

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