元西武外野手の戸川大輔氏 “第二の人生”に選択したのはダービー馬育成…最大手の生産牧場「ノーザンファーム」に入社

ノーザンファームに入社した元西武の戸川氏(カメラ・島山 知房)
ノーザンファームに入社した元西武の戸川氏(カメラ・島山 知房)
2019年5月25日の日本ハム戦でプロ初安打を放った戸川氏
2019年5月25日の日本ハム戦でプロ初安打を放った戸川氏
15年6月の安田記念を制したモーリスと記念撮影する(左から)戸川氏の父で生産者の洋二さん(2人おいて)川田騎手ら関係者
15年6月の安田記念を制したモーリスと記念撮影する(左から)戸川氏の父で生産者の洋二さん(2人おいて)川田騎手ら関係者
ソングラインの鼻を触る戸川氏
ソングラインの鼻を触る戸川氏

 “雑草魂”を胸に、競馬界の頂点に向かって再出発する。北海道日高町出身で元西武外野手の戸川大輔氏(28)が、数々の名馬を輩出してきた業界最大手の生産牧場「ノーザンファーム」に入社。牧場を営む両親と同じく競走馬生産の道に進むことを決めた。育成ドラフトでの入団から1軍の舞台で本塁打も放った男が次に目指す夢とは―。

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 選手、コーチとして携わってきた野球に別れを告げ、戸川氏は次なる夢に向かって歩き出した。“第二の人生”に選択したのは競走馬生産の道。「自分が携わった馬で大きいレースを取るために、地道にやっていきたい」と腕をまくった。

 14年育成ドラフト1位で西武に入団し、16年に支配下契約をつかみ取った。19年に1軍初昇格を果たすと、同年4月5日の日本ハム戦でデビュー。二ゴロに打ち取られたものの「ネクスト(バッターズサークル)から歩いて、打席に入ると応援歌が流れて。野球人生で初めて足が震えましたね」と振り返った。5月31日のロッテ戦で放ったプロ初本塁打よりも、初打席の情景が一番に思い浮かぶという。

 1軍では通算28試合に出場し6安打。腰のけがもあり22年に現役を引退した後は、西武のアカデミーコーチを2年間務めた。「子どもたちに野球を教える楽しさ、難しさ。すごくいい経験、勉強をさせていただいたと思ってます」。指導の奥深さを日々学ぶ中、趣味で始めた乗馬が人生を変えた。

 実家は国内外でG16勝のモーリスを生産した日高町の戸川牧場。野球を始める前は騎手を志していた時期もあったが「野球を始めてからはずっと野球で、牧場で働くことはまったく頭の中になかった。父も別にやらなくていいよ、って感じでしたね」。それでも、乗馬で馬と触れあう中で競走馬生産への思いが芽生えたという。1年かけて妻と話し合いを重ね、ノーザンファームの採用ページから応募。集団面接などを経て入社が決まった。

 進路が決まった際にはオフの自主トレなどで交流があり、2月8日の小倉競馬で馬主として初勝利を挙げたソフトバンク・柳田にも報告。「頑張れよ、と言ってもらいました」。現在は繁殖部門のスタッフとして、毎朝6時半から馬房の清掃や餌づくりなど基礎を学んでいる。

 自らが携わる馬で最も取りたいタイトルを問われると「やっぱりダービー。実際に見に行って、特別なG1だと思ってます」と即答した。プロ5年目で1軍の舞台にたどり着いた自身の経験と、落札価格1050万円から遅咲きで大出世を果たしたモーリスの姿を重ね合わせ「諦めず、目標を見失うことなくコツコツやっていけたら」と誓った。ダービー馬、そしてモーリスを超える名馬生産へ―。28歳の“ルーキー”がセカンドキャリアをスタートさせた。(島山 知房)

 ◆戸川 大輔(とがわ・だいすけ)1996年4月29日、日高町生まれ。28歳。厚賀小2年時に野球を始め、厚賀中では札幌グロウィングス(現・札幌北広島ボーイズ)でプレーした。北海高2年秋に投手から外野手へ転向。3年夏の南北海道大会は初戦敗退で甲子園出場なし。高校通算13本塁打。2014年の育成ドラフト1位で西武入団。プロ通算28試合に出場し打率1割9厘、1本塁打、2打点。右投左打。

 ◆ノーザンファーム 前身の社台ファームが分割され、1994年に創業。北海道安平町、福島県、滋賀県など国内5か所の事業所で競走馬の生産・育成などを行っている。主な生産馬はディープインパクト、アーモンドアイ、イクイノックス、ドウデュースなど。2011年から14年連続で生産牧場リーディング獲得中。

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