【フェブラリーS】師弟タッグで最後のG1へ 3月定年の音無調教師のため弟子がデルマソトガケと恩返しの勝利だ

松若がまたがって坂路で調整したデルマソトガケ
松若がまたがって坂路で調整したデルマソトガケ

◆第42回フェブラリーS・G1(2月23日、東京・ダート1600メートル)

 25年のG1開幕戦、第42回フェブラリーS(23日、東京)では、3月4日に定年引退を控える音無秀孝調教師(70)=栗東=が3頭出しの大攻勢をかける。そのうちの一頭、デルマソトガケの手綱を託されたのが弟子の松若風馬騎手(29)だ。昨夏以降の半年間の騎乗停止期間中も支えてくれた師匠とのラストG1に、感謝の思いを胸に臨む。

 別れの時が近づいてきた。14年のデビューから約11年。松若の騎手生活の中心には常に音無厩舎があった。フリーになった22年以降も栗東では、ほぼ毎日調教に参加。解散まであと2週と迫った今、素直に「やっぱり寂しいです」と口にする。

 3頭出しのラストG1はデルマソトガケに騎乗する。22年の全日本2歳優駿・Jpn1を勝ち、翌年のサウジダービー・G3まで騎乗したが、3着惜敗後に乗り替わり。続くドバイのUAEダービー・G2はルメールで圧勝した。「悔しい気持ちはあったけど、自分がもっと頑張らないといけないと思いました」。昨年から集中力を欠く走りで不振続きだが、今年から再び戻ってきた手綱。コンビ解消後も調教では頻繁にコンタクトを取り、秘める能力の高さは誰よりも知っている。

 熱い思いがある。昨年8月2日に酒気帯び運転で事故を起こし、翌日から半年間の騎乗停止。再び所属騎手に戻るよう、すぐに声をかけてくれたのが音無調教師だった。「うれしかったし、感謝しかありません。あの時期に自分の居場所があったのが本当に大きかった」。事故の翌週から土、日の競馬開催日も含む毎日の調教に騎乗。いつもと変わらないトレーナー、厩舎スタッフの愛情に、前向きさを取り戻した。

 G1制覇は音無厩舎のモズスーパーフレアに騎乗した20年高松宮記念1度のみ。当時は2位入線からの繰り上がりVだった。「しかも、コロナでの無観客開催で口取り写真もなかった。だから、G1を勝ったんだという実感もなくて…」と振り返る。先頭でG1のゴール板を駆け抜け、師弟で喜びを分かち合う。そんなシーンはまだない。

 中央での騎乗再開だった8日の小倉で挙げた復帰後初勝利は音無厩舎の管理馬。師匠の姿も目に入ったレース後は様々な思いが込み上げ、今まで競馬場で流したことのない涙をこらえるのに必死だった。「G1勝てば、泣いちゃうでしょうね(笑)。馬の動き自体は悪くないので、気持ちひとつだと思います」。厚い師弟の絆で呼び起こしたい闘争心。最高の思い出を作る時間は、まだ残されている。(山本 武志)

◆重賞5頭出しも自然体

 音無調教師は松若のデビュー時から「鞍はまりがいい。こういうのは天性のもの」と高く評価していた。常に伝えたのは「ゲートは上手に出るように」。競馬学校時代の研修中は管理馬のゲート試験に積極的に騎乗させた。

 今回も騎乗停止明け後の佐賀記念でデルマソトガケの手綱を任せ、中央復帰初日の8日は小倉で出走した3頭すべて、松若に託した。誰よりも温かく見守っている。

 今週は重賞に5頭出しの大攻勢をかける。特にラストG1となるフェブラリーSはプロキオンSで1、2着だったサンデーファンデー、サンライズジパングを加えた3頭出し。実はG1では17年日本ダービー(最高着順はアドミラブルの3着)以来、2度目のことだ。しかし、本人は「5頭出しといっても、(阪急杯と)2重賞だから、そんなのアッという間に終わるよ」と至って冷静。自然体で有終の美を狙う。

◆阪急杯にも2頭スタンバイ

○…音無調教師は22日の阪急杯(京都)にはソーダズリング、モズメイメイの重賞ウィナー2頭を送り込む。フェブラリーSと同様に管理馬複数頭出走で2日連続の重賞Vを目指す。ソーダズリングは、同舞台の京都牝馬Sを制したコース巧者。「追い切りでいい、悪いがはっきりするタイプ」とジャッジしただけに、19日の最終追い切りには注目が必要。一方のモズメイメイは「(前に)いけなくなっているけど、好位差しをさせたい」と作戦を明かした。

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