

◆第62回報知杯弥生賞ディープインパクト記念・G2(3月9日、中山競馬場・芝2000メートル=3着馬までに皐月賞への優先出走権、稍重)
皐月賞(4月20日、中山)トライアルの第62回報知杯弥生賞ディープインパクト記念・G2は9日、中山競馬場の芝2000メートルで争われ、単勝7番人気のファウストラーゼンが大胆なまくりで押し切り、首差で重賞初制覇を飾った。前走のホープフルS3着から手綱を執る杉原誠人騎手(32)=美浦・フリー=とのコンビ継続で、2歳王者のクロワデュノールが待つ3冠初戦に挑む。2着ヴィンセンシオ、3着アロヒアリイまでが本番の優先出走権を得た。
再びの大胆騎乗で相棒の底力を証明した。ファウストラーゼンは発馬後の行き脚がつかず序盤は後方3番手を追走。最初の4ハロンが48秒7。ペースが落ち着きそうだとみた杉原は向こう正面の800メートル過ぎから馬群の外を一気にまくり3コーナー手前で先頭へ。「この馬を信じて、持ちこたえてくれると思っていました」。直線で外から迫ったヴィンセンシオに一時はかわされかけたが、しぶとく伸び返し首差しのいだ。類いまれな勝負根性と豊富なスタミナ。「本当に頑張り屋で、長くいい脚を使ってくれます」と、2度目の手綱だった鞍上は賞賛を惜しまない。
前走のホープフルSでも、スローペースをまくる競馬で17番人気3着と波乱を演出。同様のレースで結果を出したが、当初、陣営は違うプランを描いていた。西村調教師は「スタート練習していたんですけどねえ」と苦笑い。「骨格がちゃんと完成したらスタートも出る。2、3番手が取れるならあんなにリスクを取る必要がないですから」。まだ体が出来上がっておらず、思い通りの競馬ができないなかで能力を示した。だからこそ杉原の存在が心強い。西村師は「難しい馬を任せるにあたって、何択かのプランを話し合えるジョッキー」と魅力を語る。
杉原は名伯楽・藤沢和雄元調教師の元で競馬を学び、グランアレグリア、ソウルスターリングなど名馬の調教パートナーとして腕を磨いた15年目の32歳。今回が通算重賞5勝目で、初の年間重賞複数勝利だった。西村厩舎とは、昨年7月の福島テレビオープンをカリボールで制し、関係を深めた。「今回も『あの競馬で負けたら俺たちのせい』と言ってくれましたし。ありがたいです」と感謝を口にする。
そんな信頼の絆で結ばれたタッグが皐月賞で挑むのは、ホープフルSで敗れた無敗の2歳王者クロワデュノール。牡馬クラシック初騎乗となる杉原は「強い馬もいますけど…、気合は入りますね」と静かに闘志を燃やした。馬名の意味は「芝の魔術師」。まだまだ伸びしろのある個性派が3冠初戦でどんな魔法を見せてくれるのか、楽しみしかない。(角田 晨)
ファウストラーゼン 父モズアスコット、母ペイシャフェリス(父スペシャルウィーク)。栗東・西村真幸厩舎所属の牡3歳。北海道新ひだか町・友田牧場の生産。通算成績は4戦2勝。総獲得賞金は7866万2000円。重賞初勝利。馬主は宮崎俊也氏。