
今週末の開催を最後に、東西8人の調教師が引退する。石毛善彦調教師(70)=美浦=が、最終週に臨む心境を語った。
22年のアイビスサマーダッシュ覇者ビリーバーを管理した石毛調教師は、95年3月の厩舎開業からちょうど30年のキャリアを「なんかあっという間にきちゃった感じだね」としみじみ振り返る。「『1頭1勝』というスローガンを掲げてやってきたけど、かなえてやれなかった馬もいる。それが心残り」と後悔を口にしながらも、「イケドラゴン(10年目黒記念2着)とか、評価の高くない馬をオープン馬にできたのは良かった」と胸を張った。
一番記憶に残っている馬を聞かれると、「やっぱりビリーバーですね。あの馬は本当に性格が悪くてねえ。スタッフも悩んでいました。脚部不安もあったし」と苦笑い。「アイビスはすべてがうまくいったレース。調教もうまくいって、抽選も通って、枠もいいところを引いて…、全能力を発揮させてあげられたのがうれしかった」と、会心のレースを懐かしんだ。
引退後の予定は特に決めていないという指揮官。調教師生活最後の週末は、第20回オーシャンS(3月1日、中山)にビリーバーの弟で、3度目の重賞挑戦となるクムシラコを登録している。「一勝でもできるように頑張ります」と、静かに力を込めた。(角田 晨)
◆石毛 善彦(いしげ・よしひこ)1954年11月9日、千葉県生まれ。70歳。元騎手だった父・善衛(ぜんえい)元調教師の調教助手を経て、94年にJRA調教師免許を取得。95年3月に厩舎を開業する。同年7月の福島で初勝利。22年にはビリーバーのアイビスサマーダッシュでJRA重賞初制覇を飾った。