
日本競馬の至宝ディープインパクトの産駒がいない2歳戦が始まった。19年にこの世を去り、同年にキングカメハメハも他界。ハーツクライも種牡馬を引退し、今年が最後の産駒になる。これまでこの“御三家”で回っていた種牡馬戦線は、混とんとした状態。後継種牡馬はどの馬なのか? 2歳戦の見方はずいぶんと変わったような気がする。
どの種牡馬の産駒なのか? そんな種牡馬同士の覇権争いが実に興味深い。今年のJRA2歳戦はまだ3週が終わっただけだが、芝では新種牡馬ブリックスアンドモルタルがいきなり2勝を挙げた。「サンデーサイレンスの再来か」との声も上がるが、その他はモーリス、ヘニーヒューズ(ともに3勝)、ルーラシップ(2勝)以外は1勝ずつ。昨年の天皇賞・秋から今年のドバイ・シーマクラシックにかけて国内外G1で3連勝中のイクイノックス、4月の皐月賞を勝ったソールオリエンスを出したキタサンブラックが次代を引っ張る上で頭一つリードした感はあるが、答えはまだ出ていない。
昨年2月に定年引退した藤沢和雄元調教師は、北米リーディングサイアーに3度輝いたタピットの産駒が入厩した際、「ダート馬か?」と問われてこう話していた。「サンデーサイレンスはどんな馬だった? 芝は1度も走っていないけど、スピードと瞬発力を日本に伝えて成功した。向こうのダートは時計が速い。日本のダートとは違う。今はスピードがないと戦えない。米国のスピードで勝ってきた馬を導入することに意味がある。スピードが大事なんだ」
昨年、ブリーダーズCスプリントなど短距離G1で3勝を挙げた米国産の新種牡馬ドレフォンがいきなり皐月賞馬ジオグリフを出したが、その事実と藤沢氏の言葉を踏まえると、個人的に注目したいのは米国産の種牡馬だ。今年の新種牡馬にも、プリークネスS(ダート1900メートル)、ケンタッキーダービー(ダート2000メートル)を制したカリフォルニアクロームに、ブリーダーズCジュベナイル(ダート1700メートル)を勝ったニューイヤーズデイなどがいる。この中から次代を担う種牡馬が出てくるのだろうか? いろいろ妄想していると、自然と胸がわくわくしてくる。
2歳新馬戦を見ながら、自分なりの「ポスト・ディープインパクト」探しをする。また楽しみな1年がスタートした。(中央競馬担当・松末 守司)